4月3日に弊社から日本のアパレル会社へ抗議していた
弊社が現地生産者に注文発注して販売していた、
オアハカのトゥクステペック地方・マサテコ族の商品の伝統的図案と酷似した
色・デザインが、同アパレル会社の2014年の春・夏商品として販売された件の
結果報告です。
4月7日に抗議状をFedexで送り、
4月14日にアパレル会社に受理されました。
その後、アパレル会社担当者よりメールで
「真摯に対応します」と報告を受けましたが、
先方からの書面での返信は1ヶ月以上経過してもありませんでした。
そんな矢先の5月下旬に、アパレル会社担当者から
「日本で直接お話ししたい」と、申し出がありました
(6月に私が日本へ帰国することを、弊社のブログを通して知ったようでです)
「なぜ書面で回答をいただけないのか?」と質問したところ、
アパレル会社担当者の返事は、「回答を書面に残したくない」とのことでした。
しかし、弊社は抗議状という手段で書面での回答を求めていました。
それは、直接お会いして話をしても、のちに言った言わないの
水掛け論になるのは目に見えていたからです。
また、こちらの要求が通るのであれば、実際お会いしてお話しするメリットはありますが、
こちらが要求していた件に対応いただけない、全面否定というのであれば、
会ってお話をしても意味がないという理由から面会をお断りいたしました。
弊社が、4月7日に送った抗議状にてアパレル会社へ要求したのは次の2点です。
①生産者と弊社に伝統的図案を無断で模倣したことを
認める謝罪の書面、日本語とスペイン語訳にアポスティーユを付けたもの。
②生産者へ伝統的図案類似商品のデザイン料の支払い。
しかし、約3ヶ月間音沙汰もなく、抗議状への回答は放置されていました。
「真摯な態度」で対応していただけるのであれば、
3か月間も音沙汰がないというのはおかしくないでしょうか?
その後、弊社は回答が来ない点に関して、
日本の弁護士に相談し、書面での回答を求めた通知書を作成・発送を依頼し、
やっと7月9日日付にて、7月14日、弁護士を通じて書面の回答がいただけました。
以下、先方の回答を引用します。
“「模倣」とは、他人の商品の形態をまねて、その商品と同一又は
実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいいます(中略)
図案に関してはこのような理由から「模倣」でもなく酷似していないので
弊社の請求には応じかねます。”
「図案の模倣」ではないという理由に関しては、
アパレル側の回答をかいつまんで報告すると、
“鳥の形状については、
尾の形が違う、配置、向きが違う。
花の形状については
花びらの枚数が違う、広がり方が違う。
配置が弊社のものは不規則に対して、アパレル側は交互に6個等。
葉っぱは、鳥の背面に配置され鳥の羽と一体化している”
といくつかの細かい点が記載されていました。
要は、「まったく一緒ではないから、盗作ではない」と言いたいわけです。
弊社が現地生産者に注文発注をし、
販売していた商品の伝統的図案を、勝手に模倣して
企業の利益に利用したにも関わらずです。
アパレル会社の商品が、弊社の販売商品を模倣したものであると考える理由は以下です。
●アパレル会社の販売商品の見た目があまりに弊社のものと良く似ていること。
白×グレーの色合いは一般のオアハカの民芸品市場などでは販売していない。
●弊社がアテンドを担当したアパレル会社デザイナーのオアハカ視察が行われた後に、
同社デザイナー本人より、
「今後もブログ等でメキシコ情報をチェックさせていただきます。」
という内容のメールをいただいている。
上記の事実があり、弊社が販売している先住民族の図案を模倣し、
新作デザインに取り入れたと確信して抗議しました。
今回の件で、
「アパレル会社が現地生産者を無視し、先住民族による伝統的図案に似せた商品を
作ることは、日常茶飯事に行われていること」と、周囲から諭されました。
服飾学校へ通ったことのある友人の話によれば、
まったく同一のものを作らない限りコピーとは、認められないそうです。
図案を無断で使用しても法的には抜け穴だらけであるという事実を、
今回の件で身をもって実感しました。
今回の件は告訴し、戦ったとしても勝てる見込みはないそうです。
納得のいかない結果でしたが、
過去を変えることはできないので、今後に向けて活動していきます。
具体的には、現地生産者の伝統的図案の無断使用によって、
企業だけが利益をあげるような事がなくなり、
商品発注者と生産者が納得できる規定をメキシコ国内から
発信できるようにしていきたいと思います。
現地生産者と信頼関係を築き、
いままで生産者へ利益を還元してきた弊社ですが、
過去にアパレル会社のデザイナーから企業名を聞かずに、
企業理念や姿勢を確認しないままに
現地視察アテンド依頼を受けてしまったことを後悔しています。
それがきっかけになって、
弊社のブログに掲載されていた商品写真や、書籍で紹介された図案が、
アパレル会社の商品デザインのために流用される結果に至ったわけですから。
現地アテンダントの依頼をアパレル会社のデザイナーより受けた時点で、
会社名をお聞きしていればよかったと、反省するばかりです。
企業の商品や姿勢は、サイトでも検索できますし、
その後の展開がどうなるかある程度、
想像はできたはずだったのに、と後悔が残ります。
現地の手仕事が好きで関わる方・現地の生産者を支援したいと考える方々、
日本にいても、海外にいても、販売・企画・生産管理のどんな仕事であれ、
新規で受けた仕事(サンプル制作)や現地アテンダントが
現地の職人さんや作り手に利益が還元されるものなのか、
取引先の意向を良く調べてからの行動をおすすめします。
私も今後依頼を受ける際に、
企業姿勢に共感できたら協力しますが、そうでないなら断ります。
今回は、心身ともに、ストレスを受けましたが
すごく勉強になりました。
やり方次第では、今回問題となったブランドの商品についても、
アパレル会社も生産者も
幸せになれるやり方はあったはずだと思います。
アパレル会社の方々には、
デザインのネタになるからと一時的に利用するのではなく、
「インスピレーション」を与えてくれたオアハカの職人の方々へ敬意をはらい、
愛情を持って仕事に取り組んでいただきたかったです。
また、現地まで視察にきていたのですから、
デザインのネタにしている地域名や彼らの文化や背景まで、
きちんと商品と一緒に紹介したら、ただコピーするよりは、
ずっと良かったのではないでしょうか?
今回の件は、オアハカに伝わるデザインや雰囲気だけを利用されたように感じます。
そして、現地の生産者も今回起こった問題の結果に対しては、こう言っていました。
「でも、いくら他所でオアハカの民芸を真似た商品を作っても、
結局は私たちの作る作品が一番だ。本物は違うから」
生産者たちは自分たちの仕事に誇りを持っているのです。
しかし、二度と同じような事が起きない様にと、願うばかりです。
今後は本物の良さや、生産背景なども紹介し、
現地への理解を深めてもらえるような活動にも
更に力を注ぎたいと思います。